曲目紹介
MINERVA
ドイツのムジークフェライン・ブラウンシャウゼンが創立75周年を記念して委嘱し、オランダのヤン・ヴァン・デル・ローストによって作曲されたこの作品は、1999年に初演されたばかりの比較的新しい吹奏楽オリジナル曲です。
タイトルの「ミネルヴァ」とはローマ神話の女神で、ギリシャ神話のアテナと同一とされる知恵と諸学芸、戦略、裁縫などの神です。また、アテナイ市の守護神であり、彼女の聖域として知られるパルテノン神殿にはフェイディアスの手による象牙と黄金でつくられたアテナ女神像が祭られていたといいます。
常に兜、胸板をつけて手にはやりと勝利の女神ニーケをかかえ、その力は軍神アレスをも凌ぐと謳われた神の名を冠するこの曲は、その曲調にも峻厳さがうかがえる重厚なコンサート・マーチとなっています。金管楽器によるリズム・パターンと変奏は曲の第一部にはっきりとダイナミックな性格を与え、木管楽器によって編まれるトリオのテーマも、他の曲のトリオにあらわれるような優しさや愛しさよりも寧ろ、スネア・ドラムの刻みと相俟って整然・粛然とした情景を描きます。そしてトリオを抜けると、再びあらわれる金管楽器による主題に木管楽器によるトリオの変奏のオブリガートが絡み、処女神パラス・アテナと呼ばれ永遠に処女であったと言われるこの神の様を気高く歌い上げます。
『学者は啓示を求め、発明家は霊感を求め、裁判官は明晰と公平を求め祈った』とはこの女神に纏わる数ある言い伝えの一つですが、さて皆様は何を求め祈りますか?その希いを叶える力となるような演奏になりましたら幸いです。
Irish Tune from Country Derry デリー地方のアイルランド民謡
この曲は、1855年にJ.ロスという女性によってアイルランドのデリー地方で収集され、「アイルランドの古い音楽のペトリ・コレクション」として出版された民謡集の中にある曲です。作曲者不明として収録されていたのですが、その後、グレインジャーが1902年に「デリー地方のアイルランド民謡」のタイトルで発表して注目を浴び、更にアイルランド出身のテノール歌手J.マコーマックが「ダニー・ボーイ」という詞をつけて歌って世界中に知れ渡りました。現在は「ロンドンデリーの歌」「ダニー・ボーイ」等のタイトルで数々の編曲が出ており、また歌詞も数種類つけられて世界中で親しまれています。
グレインジャーはオーストラリア出身ながらドイツ、英国、米国などを転々としつつピアニストとしても活動した異色の作曲家で、特に英国各地の民謡やバラッドを鑞管録音を使って収集した上、それらを"folk-music"という手法(単なる編曲ではなく、翻案として改作するといったニュアンスを持つ)によって世に問うた功績で知られています。
この「デリー地方のアイルランド民謡」は、まず合唱、そしてピアノ曲として発表され、その後作曲者自身の編曲により、吹奏楽曲として1918年に発表されました。そして現在でも様々な楽器や編成による別バージョンが存在している、という特徴があります。
この有名なメロディーのオリジナルは、戦いのために家を出ていってしまった息子をしのぶ内容のアイリッシュ・チューン(アイルランドの民謡の一種)が起源です。
曲全体で64小節という短い曲ですが、この優しい旋律を皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
君の瞳に恋してる
"I love you baby〜♪"でおなじみのこの曲。軽自動車のTV-CFで使われていることもあって、みなさん一度は耳にしたことのあるメロディーなのではないでしょうか。わが国では一定のサイクルで常に話題に上っています。
1980年代に意義留守のグループ、ボーイズ・タウン・ギャングがユーロ・ビート・スタイルでヒットさせて以来、ペット・ショップ・ボーイズやローリン・ヒル、日本では子比類巻かほる等がカヴァーしていますが、オリジナルは60年代前半の純粋なアメリカン・ポップスで、「シェリー」を大ヒットさせたグループ、フォー・シーズンズのリード・ヴォーカリスト、フランキー・ヴァリがソロ活動で発表した曲です。
ドラムのソロから勢いよく始まり、同じフレーズが楽器をかえて何度も表現されます。中間部でサックスとトランペットがしっとりと歌った後、再び最初と同じリズミカルなテンポで終わります。
私達の若いエネルギーと共に、元気なこの曲をお届けします。どうぞお楽しみください。
映画「海の上のピアニスト」より 愛を奏でて〜ピーチェリン・ラグ
19世紀から20世紀に移り変わろうとする1900年に、大西洋を往復する豪華客船ヴァージニアン号で一人の男の子が生まれ、そのまま置き去りにされた。彼は生まれた年にちなんで、名前をナインティーン・ハンドレッド=1900と名づけられる。
船を下りることなく成長するナインティーン・ハンドレッドは、やがて88のピアノの鍵盤の上で信じがたい才能を発揮する。自らの研ぎ澄まされた感性でのみ奏でられるメロディ。楽譜は一切読まず、旋律は乗客達の表情や仕草に合わせて紡ぎ出されていく。優しく、しかも力強い。かつて聞いたこともないその素晴らしい音色は、あらゆる人を感動の渦に巻き込んでいった。そしてその噂は海を渡り陸地にまで広がっていくのだった。
即興の音楽を通し、様々な人々と出会う中、ナインティーン・ハンドレッドはふと「陸地から見る海はどうなのだろう」と思いを巡らす。そんな時、舷窓越しに美しい少女を見る。その瞬間、彼はやさしいメロディを弾き、かつてないほど感動的な音楽を奏でた。その曲が今回演奏する『愛を奏でて』で、この映画のメインテーマでもあります。
そして、もう一つが『ピーチェリン・ラグ』。これは、ラグタイム・ピアノの天才スコット・ジョプリンの作品です。この映画の音楽を担当した作曲家、エンニオ・モコリーネ自身が「私のこれまでの作品の中で最も成功を収めた作品の一つに数えられるでしょう」と語るように、感動的なまでの抒情が全編にあふれています。非常に美しいメロディと会場を包み込む柔らかなハーモニーをどうぞお楽しみください。
スペイン
作曲者のチック・コリアはジャズ・フュージョンのピアノ・キーボード奏者で、彼の手掛ける作品は、クラシックやラテン等、様々な要素を合わせもつ大変メロディアスなものが多く、どんな人が聴いてもわかりやすいのが特徴です。このスペインもそれに漏れず大変メロディアスかつ情熱的なナンバーで、編曲は当部の打楽器トレーナー、藤城佳之の手になるものです。
曲はE.Hのソロによるロドリーゴの「アランフェス協奏曲」の引用から始まり、突然の印象的なリフをきっかけにテンポの速い16ビートのラテンフィールに移行します。木管、金管群の迫力のあるユニゾンや様々なソロを織り交ぜながらめまぐるしく進行していき、最後はテンポを落としてtuttiのコードで華々しく終わります。情熱的かつエネルギッシュなラテンの雰囲気をどうぞお楽しみください。
River Dance
1994年、ヨーロッパ国際音楽コンクールの余興のためにわずか7分の幕間劇として作られたリバーダンスは、その後視聴者の大きな反響に応えて2時間の舞台ショーに変貌、1995年にダブリンで初演されました。映画「タイタニック」の一場面にも登場しています。
リズム隊はドラム・ベース・パーカッションのロックスタイルで、シンセサイザーも使われていますが、アイルランドらしくフィドルやギター、管楽器などが加わり、その哀愁とパワーとが共存する音楽の上で見事な足さばきのアイリッシュダンスが踊られます。
内容は二部構成となっていて、第一幕では太古にアイルランドに渡ったケルト民族の人々がアイルランドの自然や伝説に溶け込み、定着していくさまが描かれています。第二幕では19世紀の飢饉などの中でアメリカに渡ったアイルランド人が新しい文化を自分のものにしながらアイルランドの伝統を守り、やがてアイルランドへの帰郷を果たすというストーリーになっています。今回はその中から以下の曲をお送りします。
THE WELLSPRING THEME ―― 原曲では「イリアンパイプス」という楽器が使われています。どこか悲しげで懐かしいメロディー。今回はソプラノサックスのソロでお送りします。
WOMEN OF IRELAND ―― アイルランドの女性の象徴。二曲構成。曲が進むにつれて、力強さを増して行きます。
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