公開講座
公開講座「21.1世紀:人間の現代」
五月祭では毎年、東京大学の「知」を発信する場として、本学教官による公開講座を行なっています。
これは、総合大学としての東京大学の幅広い学術的成果を来場者の方々にもお伝えしようと、五月祭常任委員会が開催しているものです。
今年は、21世紀で2番目のディケイド(21.1世紀)に突入するということで、"人間の現代"をテーマに据えて、法・医・工・文・理・農の6分野の先生に、新たな10年代の幕開けにふさわしい講義を行なっていただきます。
各先生の詳しい講義内容は、以下をご覧ください。
※事前予約等はありませんので、当日直接教室にお越しください。
| 場所 | 工学部2号館 工223教室 | ||
|---|---|---|---|
| 29日(土) | 10時30分-12時 | 青木健一先生 | 「進化理論から探るヒトの学習と文化の特徴」 |
| 12時30分-14時 | 武藤香織先生 | 「医学研究と社会の接点」 | |
| 14時30分-16時 | 川出良枝先生 | 「グローバル化時代にジャン・ジャック・ルソーを再読する―ルソーの「国家」観」 | |
| 30日(日) | 10時30分-12時 | 斎藤幸恵先生 | 「植物細胞壁に学ぶ材料の設計」 |
| 12時30分-14時 | 大武美保子先生 | 「ヒトを賢くする技術」 | |
| 14時30分-16時 | 沼野充義先生 | 「いま文学に何ができるのか?」 | |
場所
工学部2号館 工223教室
(工学部中庭サブウェイ脇の階段の近くです)
29日(土)
青木健一先生:理学部・生態人類学
「進化理論から探るヒトの学習と文化の特徴」
10時30分-12時
生存・繁殖に必要な情報は、生得的に用意されていない限り、社会学習または個体学習によって獲得されなければならない。社会学習とは、模倣など他者の観察による学習を意味する。一方、個体学習とは、試行錯誤など自分の経験に基づく学習を意味する。文化とは、個体学習によって創出される新制度、新技術などが社会学習によって伝播する過程、また伝播した結果である。
ヒトとネアンデルタールは、言語機能に支えられた正確な模倣学習を共有する。一方、試行錯誤を超えた創造性ともいえる個体学習は、ヒトのみの特徴のようである。その証拠に、ネアンデルタールの石器伝統は何万年もの間、忠実に継承されたが、ほとんど変革が見られなかった。一般に、学習能力とりわけ個体学習能力は、環境変化に対する適応であると考えられる。ヒトは10万年前以降、東アフリカを起点として、アフリカ内外へ急速な分布拡大(出アフリカ)をした。その際、様々な異質環境を経験したことが原因で、高度な個体学習能力が進化した可能性を理論集団生物学に基づいて示す。
ヒトの文化の特徴は、蓄積性にある。つまり、既存の文化を土台に新しい文化が創出され、そのために文化が進化するといえる。蓄積的な文化は、社会学習で既存の文化を吸収し、個体学習でこれに改良を加える能力が同一人に備わっていることによって、始めて可能になる。このような複合学習戦略が進化するための条件を、ヒトの生活史との関連で検討する。
※講師の研究室については以下を参照してください。
http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/seitai/lab.html
武藤香織先生:医科学研究所・公共政策研究
「医学研究と社会の接点」
12時30分-14時
先生急病のため、中止となりました。ご了承ください。
川出良枝先生:法学部・政治学
「グローバル化時代にジャン・ジャック・ルソーを再読する―ルソーの「国家」観」
14時30分-16時
21世紀もはや10年代に突入しました。この10年をふりかえって、21世紀とはどんな時代かを考えるときに第一に思いつく言葉はやはりグローバル化(globalization)ではないでしょうか。しかしながら、国境に閉ざされた「国」とその外にある「外国」、またさらには人類すべてを含む全地球代の秩序との間の複雑な関係に直面したのは、何も現代のわれわれだけではありません。今回の講義では18世紀の政治思想家ジャン・ジャック・ルソーをとりあげ、祖国とは何か、国民とは何か、また、それらをこえるコスモポリタンな世界秩序とは何かという問題をめぐるルソーの知的苦闘の一端を紹介してみようと思います。
興味のある方は、『思想』1027号のルソー特集号の川出の論文をご覧ください。
※講師のプロフィール(経歴)については以下を参照してください。
http://www.j.u-tokyo.ac.jp/about/professors/profile/kawade_y.html
30日(日)
斎藤幸恵先生:農学部・生物材料物理学
「植物細胞壁に学ぶ材料の設計」
10時30分-12時
再生産可能な資源である植物材料の利用への関心が、昨今ますます高まりつつありますが、植物材料と人類との関わりは数千年の長い歴史を持ち、植物材料は都市の建築・生活資材、エネルギーとなって、数多の文明を担ってきました。21.1世紀を迎える現在、植物材料の知られざる数々の「別の顔」が発見され、それをもとに新素材が生まれつつあります。植物材料のポテンシャルの高さの理由は、生命を持ち「育つ材料」であるからかもしれません。植物個体はひとたび発芽するとその場所から移動できません。環境に耐えて生き抜くために長い進化の過程で獲得してきた複雑なしくみの一つが、われわれが植物材料として利用している細胞壁です。植物細胞壁は、それ自体が巧妙に「材料設計」された微細構造を持ち、ユニークな理学的特性を発揮します。われわれの生活に不可欠でごく身近に使われている建材や紙などにも、その特性は生かされています。この講義の前半では、光学・電子顕微鏡で見た植物細胞壁の姿と、それらの集合体である組織構造が機能して発現する、植物材料としての理学的特性について紹介します。後半では、細胞壁の特徴を活かすことで創製したカーボンフィラメントなど、新素材の具体例を挙げながら、植物細胞壁から開花する将来の夢の材料設計の可能性を考えていきます。
※講師のプロフィール(経歴)については以下を参照してください。
http://www.ga.a.u-tokyo.ac.jp/p_saito.html
大武美保子先生:工学部・サービス工学
「ヒトを賢くする技術」
12時30分-14時
どんなにコンピュータが賢くなっても、一向に賢くならないのがヒトです。本講義では、コンピュータを賢くするのでなく、ヒトを賢くすることを目指し、ヒトならではの賢さに着目して開発中の、運動や会話の上達を助ける技術を紹介します。
※講師のプロフィール(経歴)については以下を参照してください。
http://www.neuroscint.org/otake/
沼野充義先生:文学部・現代文藝論
「いま文学に何ができるのか?」
14時30分-16時
テロリズム、環境破壊、貧困といった問題が山積した現実を目の前にして、文学はどんな意味を持つものでしょうか? ドストエフスキーや、チェーホフ、カフカ、ナボコフといった世界文学の古典から、大江健三郎や村上春樹などの現代日本文学までを視野に入れ、自由と解放をもたらす文学の可能性について考えてみます。
※講師の研究室については以下を参照してください。
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/genbun/

