ピックアップ企画
ツリーハウスとハンモック
東京大学まちの子ども見守り隊
五月祭で行われる企画は、それぞれ様々な年代の方を対象としている。ここで紹介する「まちの子ども見守り隊」はその名の通り、子どもたちを対象とした企画である。東京大学構内にある木に、子どもたちと力を合わせてハンモックを作り、自然の中でのんびりと遊ぶというもの。長い五月祭の歴史を振り返っても、このような企画は例がない。どうしてこの企画を行うことになったのか、企画代表者の石幡愛さん(東京大学大学院教育学研究科)にお話を伺った。
――まず、「まちの子ども見守り隊」とはどのような団体なのでしょうか。
「まちの子ども見守り隊」は、谷中・根津・千駄木といった東大周辺の地域で子育てをしているお父さんお母さんと一緒に、子どもの成長を見守るネットワークです。私たち学生も団体の立ち上げから参加し、子どもと一緒に遊びながら保育や教育の現場で学ぶ貴重な体験をしています。
普段は月1、2回ほど、文京区・台東区・荒川区の子育てサークル「青空保育の会たねっこ」の親御さんが勉強会を開いている間、子どもたちの遊びを見守る(一緒に遊ぶ)活動をしています。見守り活動をした後は、親御さんや子どもたちと一緒にお昼ご飯を食べながら、保育や教育について話したりもします。この活動は平日午前に行われることが多く、たねっこのお母さん方と学生が中心です。
また、年に数回、野外での創作遊びを企画しています。地域の公園や広場などで、身近にあるものを再利用して、遊び場を作るという活動です。子育てサークルのほかに、西日暮里でプレーパーク(整備された公園ではなく、廃材・土・水などを使って子どもが自由に活動できる冒険遊び場)作りを行っている、冒険遊び場の会の方と連携して行っています。こちらは、週末に行うため、両親そろって参加してくださるご家庭が多く、近所の方や散策に来た遠方の方の飛び入り参加も見られます。
――今までの活動の中で特に印象に残っていることを教えてください。
2009年5月に、台東区の広場で、ダンボールを使った創作遊びを行いました。2008年の冬から中学生5名と一緒に準備してきたイベントで、たねっこの親子やご近所の方、保育や教育に関心のある学生や社会人が参加してくださいました。地域活動によく参加する年代は、小学校低学年までか大学生以上で、中学生や高校生は地域離れの傾向にあります。このときは、中学生を巻き込むことができたことがよかった点です。企画側に中学生がいたおかげで、その広場で遊んでいた小学校高学年から中学生の子どもたちも参加してくれました。
――それでは、今回の五月祭ではどのような企画を行うのでしょうか。
地域の方に参加していただき、その子どもと一緒に大学構内のクスノキに憩いの広場を作ります。五月祭1日目の朝に専門家のご指導を受けながら、ハンモックやツリーハウスを子どもと協力して作り、その後2日間自然の中でのんびり遊ぶという企画です。
普段ともに活動している企画者のコミュニティやキャンパス付近の商店街などを通じて周辺地域の方に広く告知を行い、大学と地域をつなぐ関係づくりができたらと思っています。
――企画を通じて来場者に伝えたいメッセージがあるとのことですが。
はい。今回の企画は、身近にあるもので工夫して遊ぶ場です。最近注目の立派なツリーハウスではないけれど、材料と知恵と人手を持ち寄りあって、みんなで作ることに楽しさと喜びがあります。また、自分の責任で自由に遊ぶことも大事にしています。それは、子どもが自分の行動を主体的に選択して、その結果を引き受けるということです。リスク管理のために「あれダメこれダメ」と子どもの学びの場を奪うのではなく、「何をしたらどうなるのか」を子ども自身が考えて行動する機会を、この企画では意識的に作りたいと思っています。
普段からキャンパス内では様々な方がすごしています。散歩に来ているご近所さん、遊びに来ている保育園の子どもたち、見学に来ている中高生、そして私たち学生。そういう意味では「地域に開かれた大学」なのかもしれません。けれども、みんな、普段はそれぞれの生活のレイヤーを生きていて、異なるレイヤーが交わることはありません。
私たちの活動のねらいは、一緒に遊んだり食べたりする時間を共有することで、それをきっかけに様々な立場の人々をつなぎ、対話を生むことです。その対話の根本に、子どもたちと、彼らが生きる社会の未来を思う気持ちがあったらいいなと思っています。子育てに携わっている人、今はそうではないけれど興味がある人、いずれそうなる人、子育てが終わった人。それぞれに、思うこと、したいこと、できることがあると思います。「さぁ議論するぞ」と身構えて話すのではなく、雑談の中で自然に、子どもたちや身近な地域のことを考えたり話したりしてもらえたらうれしいです。
――ありがとうございました。当日を楽しみにしています。
ありがとうございました。当日はどなたでもぶらりとお越しください。
「青空保育の会たねっこ」活動参加報告
4月13日(火)に上野公園で行われた「青空保育の会たねっこ」の親子による活動に参加した。活動とは言っても時間通りきっちり集まってみんなで何かをやるという形ではなく、まさに近所の親子の集いといった感じ。毎週火曜日と木曜日に集まってしばらく遊んだ後にみんなでご飯を食べるという流れのようだ。
集まっている子どもは1歳~4歳くらいで、まだ歩くことができずレジャーシートの上で日向ぼっこをしている子から、おもちゃの自転車に乗って所狭しと動き回る子までいた。中には幼稚園に通っている子どももいたが、むしろ保育園等が満員でサービスを受けられない「待機児童」の問題を受け、自分たちで助け合って子どもの世話をするという「自主保育」の考え方をとっているとのことである。
「公園デビュー」という言葉がある。今の時代、地域のコミュニティに後から参加するというのは大変なことのようで、親にとっても子にとってもこれは重要なイベントだと考えられているとか。しかし、彼らの様子からは少しもそんなことは感じられなかった。偶然通りかかった人にも気さくに声をかけるお母さん方に、突然やってきた見知らぬ大人である筆者にもすぐに打ち解けてくれる子どもたち。ここには煩わしい人間関係など全くなく、上野公園の自然の中で誰もが楽しくのんびり過ごしていた。
メンバーの中には五月祭当日にハンモック作りに参加してくださるお父さんもいらっしゃっていた。普段は保育士をなさっているとのこと。本郷キャンパスは地域で上野公園と並ぶ最大規模の自然環境を有しているが、そこで遊ぶ子どもたちがほとんどいないことを嘆いていた。また今回作るハンモックやツリーハウスは一時的なものだが、今度東京学芸大学で常設のツリーハウスが作られるという話を受けて、いずれ東大でもそういったことができれば、という夢を語っていた。

